🌉インターオペラビリティ

SMPの経済圏を確立するためには、ブロックチェーンをコア技術として活用しつつ、外部システム(他ブロックチェーンやオフチェーン)とのインターオペラビリティを実現することも重要なファクターです。なぜなら、ブロックチェーンは内部状態の整合性についての検証可能性を実現してくれますが、外部から持ち込まれたデータの整合性を確認する方法までは提供されていないからです。

また、異なるブロックチェーン同士のインターオペラビリティを実現するブリッジサービスや、ブロックチェーン外部システムとのインターオペラビリティを実現するオラクルサービスなどは、暗号資産の盗難やデータの改竄といった攻撃を受けやすいモジュールでもあります。

初期のビットコインを軸としたクロスチェーンスワップには、HTLC(Hashed Time-Locked Contract)などの暗号技術を用いた解決策が模索されていました。しかし、スワップにかかる時間が長すぎるなどの実用的な課題もあり、現在のEVM系チェーン間のブリッジでは、複数のRelayersによる合意形成を用いたスキームが主流となっています。一方、Relayers方式では、ブリッジの運営主体へのトラストが必要となる、攻撃リスクが高い、共通のプロトコルが確立されていない、といった課題も多く残されています。

これらのインターオペラビリティ課題に関する解決手法も日進月歩で進化を続けているため、SMPでは特定の技術に依存しすぎないモジュール構成を重視し、時代に応じて最適な技術を取り入れて、ユーザビリティとセキュリティを向上させていくことを目指します。

オーバーレイ・トークン構想

DMMグループでは、2018年頃からブロックチェーンのインターオペラビリティの重要性に着目し、異なるブロックチェーン同士を接続する際のセキュリティやユーザー体験を向上させる研究開発をおこなってきました。例えば、EVMベースのチェーン間の双方向リレーを構築するPeaceRelayや、PeaceRelayを用いて多数のブロックチェーン上のトークンを取引可能な分散型取引所であるGORMOSなどのプロジェクトに関する研究(例: GORMOSホワイトペーパー日本語版)や、PolkadotのパラチェーンとEVMチェーンとの相互接続に関する研究、その上で実現される、インターオペラビリティを前提としたトークン規格であるオーバーレイ・トークン構想の提案などです。

オーバーレイ・トークンとは、コンピューターネットワークにおけるオーバーレイネットワークのように、複数の物理的なブロックチェーンの上に構築される、仮想的なトークンレイヤー上のトークン規格です。web3のマスアダプションを考える上で、一般のユーザーが個々のブロックチェーンの違いを意識しなければならない状況は問題であり、ユーザーがいま使っているブロックチェーンのことをなるべく意識することなく、サービス体験に集中できる環境を作り出すことが重要だと考えました。これは、近年のChain Abstractionの考え方に類似しています。

オーバーレイ・トークンの発想では、例えばトークンの発行はセキュリティレベルの高いEthereumチェーン上でおこないます。そして、ゲームやビデオ、マーケットプレイスなど、サービスの特性に応じて最適にチューニングされたチェーンを構築し、そのチェーン上に必要な額のトークンをブリッジした上でサービスを活用します。この発想は、現在のわたしたちのSMPのアーキテクチャにも引き継がれています。

このとき、ブリッジされたトークンは各チェーンに分散して存在していますが、ユーザーは自分が保有しているトークンが実際にはどのチェーンに存在しているかを意識せずに使えることが理想だと考えました。そのような体験を実現するために、各チェーンに存在しているトークンコントラクトが、他のチェーン上のコントラクトの状態をどのように同期するか、といった課題を解決しようとしたものが、オーバーレイ・トークン規格の提案でした。

オーバーレイ・トークンと類似するプロジェクトとして、Efinityのパラトークン規格や、パブリックなクロスチェーントークン規格であるxERC20、LayerZeroのOmnichain Fungible Token (OFT) があります。

Omnichain Fungible Token (OFT) の活用

Omnichain Fungible Token (OFT) は、ネイティブでインターオペラビリティ機能を提供するトークン規格のうち、もっとも広く普及しているトークン規格です。OFTとしてトークンを実装することで、ユーザーはラップドトークンや流動性プールなど追加の準備をおこなうことなく、トークンを複数のブロックチェーン間で相互運用することが可能になります。

SMPでは、独自トークンSMPのインターオペラビリティ機能の実装のためにOFT規格を採用し、LayerZeroのメッセージングスタックを活用しながら、マルチチェーンの利用におけるユーザーの負担を最小限に抑える取り組みをおこないます。また、zkBridgeなどの研究開発にも投資をおこない、インターオペラビリティ技術におけるセキュリティとパフォーマンスの向上にも貢献していく予定です。

SMPトークンにネイティブのインターオペラビリティ機能を実装することにより、ユーザーは異なるブロックチェーン上のコンテンツ消費が容易となります。これは、既存ビジネスにおけるポイントプログラムでさまざまな参加企業を募ることでユーザーの消費行動のデータを集約・分析し、さまざまなマーケティング施策やユーザー体験の向上を目指した事例と類似しています。異なる点としては、ユーザーの消費行動や保有資産などの情報をプラットフォームが独占管理するのではなく、データの主権はあくまでユーザー側に存在し、データはパブリックチェーン上で共有されながら、オープンな形で活用できることです。これによって、ユーザーのプライバシーやデータ主権を守りつつ、公開可能なデータを共通フォーマットでオープン化してさまざまなサービスの品質向上に役立てる、web3ならではのトークンプログラムを実現できると考えています。

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