💡1. イントロダクション

web3とは、一般的に「ブロックチェーン技術を活用して実現される、特定のサービス主体に依存しない分散型ウェブ」を指すと言われます。しかし、そのようなweb3の理想を実現するためのハードルはまだまだ高く、広く社会に受け入れられた成功事例は多くありません。

特に、といった用語の定義はさまざまであり、その解釈や思想の違いによって、過度な期待やコミュニティの分断が発生し、本来実現したかったはずのweb3の理想の実現が妨げられている可能性があります。

私たちDM2C Studioは、こうした思想的分断を乗り越え、多くのパートナーやコミュニティメンバーと連携しながらweb3の理想を実現するための課題解決を図り、web3が本来発揮する特性を活かした事業作りに挑戦します。

本章では、私たちがSMPを通じて、web3を取り巻くどのような課題の解決を試みようとしているのかを解説します。

web3の現状と課題

web3に期待されている特性の一つに「データの永続性・不変性の担保」があります。

インターネットの発明に伴うコンテンツのデジタル化の波は、その利便性の高さゆえに今後も加速すると考えられます。その流れの中でコンテンツは、デジタル化によって物理的な劣化を免れ、半永久的に品質と価値が保存されることが予期されてきました。例えば、ビデオテープに記録された映像コンテンツはダビングを繰り返すことで劣化していきますが、デジタルデータ化されたコンテンツはコピーしても劣化することなく、半永久的に保存できる、といった主張がありました。

しかし実際は、デジタル化したデータの保存は、長期的にはアナログな保存方法より高コストであるというデジタルジレンマの問題が表面化してきています。特に、インターネットサービスを通じて提供されるコンテンツは、サービス提供者の都合で容易に消滅しうることが多くの事例で証明されています。例えば、ソーシャルゲームで獲得したゲーム内アイテムや、電子書籍サービスで購入した書籍データなどは、サービス終了によってコンテンツにアクセスできなくなることが多くあります。

また、ダウンロード版のゲームや電子書籍などは、パッケージ版のゲームや紙の書籍と比較し、家族や友人間での貸し借りや、中古市場での取引などが難しく、そのコンテンツを所有しているという実感が沸きにくい体験となっていました。

こうした理由から、コンテンツの長期保有や自由な活用といった目的のために、従来のアナログメディアが再評価されている側面があります。

一方、web3技術による分散管理の手法を用いれば、デジタルコンテンツとしての利便性も享受しつつ、長期保有や自由な活用といったニーズにも応えることができるのでは、といった期待が寄せられました。例えば、ゲーム内アイテムや書籍データをブロックチェーン上のNFTとして表現することで、サービス終了後であってもブロックチェーンシステムが稼働し続ける限りは、ユーザー自身がコンテンツを管理し、半永久的にアクセスし続けられるようになり、永続性・不変性が担保されたデータのデジタル化が実現できるのではないか、といった期待です。

しかしこちらもまた、web3が抱える課題によって、必ずしも上記の理想を実現できているわけではありません。私たちは、この大きな要因として、2つの方向性の課題があるのではと考えています。それは、次に示す思想的・技術的な課題です。

web3が抱える思想的・技術的な課題

まず第一に、web3に対する理解や期待のズレといった思想的な課題です。

冒頭でも言及したとおり、「web3」という用語自体が多義的であり、目指すものや具体的な内容について明確な合意が得られているわけではありません。また、web3に関する新しい技術やアイデアが日々登場し、情報がめまぐるしくアップデートされている一方で、普段からそういった情報に触れていない多くの人々との認識の隔たりが大きくなっています。web3に関する思想の多義化や先鋭化によって、マス層を含む多くの人々が一丸となって共通の問題解決を図ることが困難であるという現状が考えられます。

先述した「分散管理」の手法を確立するには、これまで特定のサービス提供者が負担していたさまざまな運用コストを参加者全員が分担しなければなりません。一方、それを実行できるのは一部のリテラシーの高い限られた人々で、多くの人々のリテラシー水準とは乖離があるのが現状です。

その結果、多くのユーザーを取り込みたいサービスにとっては、旧来のサービス提供者が運用コストを負担するモデルが合理的な選択肢となり、ユーザー側の多くもそういったサービスを選択するといった、中央集権的モデルへの揺り戻しが発生しています。それに対して、web3の理想とは逆行しているといった批判も起こりがちであり、そうした思想の分断は、健全な技術の発展に悪影響を及ぼしている可能性は否定できません。

次に挙げられるのは、求められるサービス水準を実現するための技術的な課題です。

残念ながら、既存のweb3技術だけでは、多くのweb3系プロジェクトが掲げる理想を実現しつつ、一般的なサービスとしての要求水準を満たすだけのクオリティを担保することが困難です。例えば、ブロックチェーンの特徴である秘密鍵による単要素認証という制約下でセキュリティを保つために、ユーザビリティの低下や、ユーザーに対する高いリテラシーの要求が発生しています。また、ブロックチェーンは分散システムの一種であるものの、システム全体の合意形成に主眼を置いているため、ネットワークの規模が大きくなっても、ネットワーク全体の処理能力は向上しないという、スケーラビリティに乏しい構造となっています。さらに、異なるブロックチェーン同士の接続や、ブロックチェーン以外のシステムとの連携といった、インターオペラビリティ(相互運用性・相互互換性)の実現難度が高い、という課題も挙げられます。

そのため、web3的なビジョンを掲げるプロジェクトであっても、実態として従来の中央集権的な管理体制に依存せざるを得ないケースが多く、事業の撤退とともに利用できなくなってしまうサービスが多いことも事実です。

もちろん、個々の技術的課題については、改善のための有力なソリューションを提案・実装するプロジェクトやプロトコルも登場してきているものの、前述する思想的分断により、それらのソリューションを総合的に組み合わせて問題解決を図る事例は多くありません。

私たちは、こうした思想的分断を乗り越え、有力な先端技術を積極的に取り入れることで、web3で期待される効能を活かした「サステナビリティの実現」(第2章参照)を目指しています。

web3の技術や要素は、本来サステナブルな事業実現に大きく寄与する特性を持つはずです。この挑戦は私たちDMMグループにとっては大きな意義を持ちます。

最終更新